国公立大学(教育音楽系)の概要

『音楽で大学に行きたい!』

と思っている受験生のみなさん、まずは志望校選び、そして実力判定ですね。
今回は、音楽を学べる国公立大学について、説明しましょう。

各都道府県には1つ以上の国立大学が設置されています。古くは、江戸時代の藩学校や明治時代に母体を持つ学校もありますが、現在の国立大学の原型は、戦後(昭和24年)それまでの師範学校、青年師範学校、医学・工業・経済・繊維・農林などの専門学校が統合されたものが大半を占めます。その後、産業の発展とともに新学部が誕生し、2004年の国立大学法人移行にあたり、さらに近隣の公立大学や医科大学が統合・改編されて現在の組織に至っていることが多いようです。

一口に国立大学の教育学部と言っても、様態はさまざまです。どの大学で何が学べるのか、設置課程と試験科目の観点から、学校選びのポイントを述べていきましょう。説明の前に、用語について少し解説します。

音楽に関する専門課程では、「音楽選修」「音楽専攻」「音楽専修」などの文字が見られます。小学校教育の音楽と中学校教育の音楽の扱いは区別されるため、これらを使い分けているのです。小学校教育の場合、全8科目及び特化した一科目を専門とするため「音楽選修」ですが、中学校教育は分化・専門化しますので「音楽専攻」となります。音楽科目で入学し、後に小学校か中学校を選択する場合には「専修」を使っているようです。厳密な扱いは学校により異なりますが、頭に入れておくと良いでしょう。なお教員免許については、努力次第で異なる校種や他科目を取得することも可能です。専攻によって免許状の種類(1種・2種など)が異なりますが、職務上の差異はありません。

(1)教育学部の単科大学を選ぶか、総合大学の教育学部を選ぶか
現在、教育学部のみの単科大学は、北海道・宮城・東京(学芸)・愛知・京都・大阪・奈良・鳴門・福岡の9校で、これらの都道府県では、総合大学に教員養成課程(音楽)を持つ大学は存在しません。教育に特化していますので、初等音楽(小学校での音楽教育)を設置しています。
例外的に大阪教育大学(教養学科)では、様々な音楽現場で、より高度な専門性を持つ指導的存在を目指す課程を備えています。この課程ではセンター試験が3科目となり、実技が重視されています。ただし倍率は高く、学科も手を抜くことはできません。なお、上越教育大学、兵庫教育大学、鳴門教育大学は、昭和50年代に設立された教員養成のための新構想大学で、大学院教育に重点が置かれ、大学院生は教職経験者が半数を占めます。

(2)学校教員養成課程を選ぶか、芸術課程(等)を選ぶか
国立大学教育学部の母体は師範学校・青年師範学校ですから、最も重要な機能として「教員養成課程」が挙げられます。しかし社会の流れにつれて、教育学部もさまざまな変容を遂げています(金沢大学人間社会学域・大分大学教育福祉科学部など)。
また学校教育教員養成課程だけでなく、「芸術」「表現」「文化」「生涯」などを冠した課程も増えました。さらに「学校」「教員」等の名称を持たない学校も存在します。もちろん教員免許の取得は可能です(山形大学地域教育文化学部・福島大学人間発達文化学類など)。
芸術課程(等)を選ぶ場合、センター試験を軽減して音楽実技をより重視する学校と、実技は免除または自己表現に代え、小論文や面接などを課して文化全般への関心と意欲を重視する学校があります。二方向のコースを備える場合もあります(北海道教育大学岩見沢校)。現在は地域との関わりを全面に出す大学も増えており、社会の中で文化活動に関する運営などを担う人材を育てるための課程です(鳥取大学地域学部など)。

(3)推薦入試の有無
国立大学法人化以後、各大学がより自由な選択を行える権限を持ち、推薦入試・AO入試も多く行われています。センター試験を課さない推薦I・AOIと、センター試験を課す推薦II・AOIIがありますが、どの方式を採用するかは学校や専攻によって細かく異なります。年度によっても変動しますので、準備不足のために志望校の幅を狭めることのないようにしたいものです。入試科目が多いのは確かに大変ですが、元来大学は、高校までの学習内容を前提として学問を行うところです。特に音楽専攻の学生は西洋との関わりも深いですから、外国語と歴史の知識は必ず必要です。さらに将来は入試が難化すると考えられますので、音楽だけに偏らず、全ての科目に興味を持って取り組みましょう。
推薦入試を目指す場合には、書類(音楽活動実績書、推薦書、調査書、志望理由書など)、高校時の全体評定で一定以上の成績が必要です。学年条件(現役または浪人の年数制限)、同校からの人数制限も確認しましょう。

【AO入試I(センターなし)】
事前に自己推薦書等や課題レポートなどの書類審査を経て、グループディスカッションと面接(高知大学)、実技レッスンとソルフェージュ試験等及び面接(佐賀大学)などが行われています。出願が夏には始まり、秋~冬に試験と時期が早く、通常の筆記試験と実技試験とは異なる対策が必要です。

【AO入試II(センターあり)】
理系・医学系では多く見られますが、音楽専攻は元来実技重視なので、数は多くありません。主に小学校教育の中で多く、事前に自己推薦書等や課題レポートなどの書類審査を経て、関連映像を視聴後に小論文及び複数教官によるグループ面接(横浜国立大学)、集団交流活動試験、音楽基礎実技を含む面接(千葉大学)などで行われています。社会や教育での問題発見意識、他者とのコミュニケーション能力が問われます。

【推薦入試I(センターなし)】
一般学科では書類審査・面接・小論文など負担が軽減される傾向がありますが、音楽専攻の場合、あくまでも実技は一般入試と共通、または同難度が多く、倍率も高いので周囲よりも一足早い準備が必要です。また早い時期に合格が決まっても、入学後に学内テスト等もありますので、気が緩まないよう注意しましょう。より高度な専門教育は入学後に始まります。

【推薦入試II(センターあり)】
多くの学校教育養成課程では、アドミッションポリシーに「大学での学習に必要な基礎的学力の総合的評価のために、大学入試センター試験を課す」とあります。一般に学科試験が大きな比重を占めており、教員養成課程でおよそ5~7教科、芸術課程で2~7教科です。音楽実技を課す学校もあります。

【その他の特別入試】
帰国子女・社会人・地域推薦・編入学・学士入学・私費外国人・中国引揚者等子女・外国学校出身者・専門学校・総合科などの対象者、また大学独自の方式があります。教員養成課程には編入試・社会人ともに少ないようです。ただし芸術文化に関する専攻で、小論文が比重を占めるような専攻では、社会人枠も用意されています(神戸大学など)。帰国子女・私費外国人・中国引揚者等子女・外国学校出身者・専門学校・総合科などは、学校それぞれに状況が異なりますが、いずれも応募は若干名で、専攻が細かく指定されているようです。